TECHNOLOGY

心不全治療に対する
メトセラの取り組み

再生医療分野では、幹細胞から作製した心筋細胞で壊死した組織を置き換える研究が盛んに行われています。しかしながら、ダメージを受けた組織を置き換えるためには、膨大な数の細胞が必要となる点や投与した細胞への免疫反応が大きな課題となっています。
メトセラは、これらとは全く異なるアプローチから研究開発を行い、心臓の微小環境の改善と組織再生に着目した細胞製品の開発に取り組んでいます。

細胞の特性は、その周りを取り囲む微小環境によって左右されます。心筋梗塞などの虚血状態は心臓の微小環境に障害を与え、これが細胞の組織再生作用を妨げてしまいます。
VCFの投与には、この障害を受けた微小環境を抜本的に改善し、ダメージを受けた組織・細胞の再生を促す作用があると考えられています。

メトセラは最初のパイプラインとして、患者さま本人の細胞を使用する自家細胞の治療薬を開発しています。これにより、長期間の細胞定着が期待されるだけでなく、他家細胞では実現が困難とされてきた細胞の複数回投与の実現も期待されます。

心不全とは

心不全は、心臓のポンプ機能が低下して全身の血液が滞ってしまう状態のことで、心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋炎など様々な心臓病や高血圧、腎臓病などが原因となり引き起こされます。心不全の代表的な症状には、胸の痛みや、動悸、息切れなどがあります。適切な治療を行わないと病状は悪化し、治療を行った場合でも、少しずつ症状が悪化してしまうこともあります。

現在は心不全を根本的に治療する方法はなく、薬物療法や医療機器による治療等で症状を緩和させる緩和療法が中心です。また、症状が進行した患者さまに対しては、心臓のポンプ機能を代替する左室人工心肺装置(LVAD)や、心臓移植が適応となります。

JAPAN
120万人
GLOBAL
2,600万人

根本治療法としては心臓移植が検討されますが、ドナー数の不足により国内での実施件数は年間100件にも満たず、膨大な費用をかけて米国での移植に踏み切る方もいらっしゃいます。

日本では120万人ほどの方が、世界でも2,600万人ほどの方が心不全に苦しんでいるといわれています。
治療の選択肢が限られる患者さまに、新たな治療の選択肢をご提供することを使命として、私たちは新たな細胞製品の開発にこれからも取り組んでまいります。

VCFの発見、
メトセラの始まり

VCFの治療効果は、共同創業者の一人である岩宮貴紘によって見出されました。研究を通じて、同じ臓器の中にも様々な種類の線維芽細胞が存在すること、その中でも心組織の回復に特に適した線維芽細胞群(VCAM-1-positive Cardiac Fibroblast, “VCF”)が存在することを明らかにしています。
VCFは培養が容易で低コスト培養が可能でありながら、心臓内でのリンパ管新生や心筋細胞の増殖を促進し、ダメージを受けた心組織の回復を促す力があることが分かっています。
これらの発見をもとにもう一人の共同創業者である野上と岩宮が2014年にタッグを組み、基礎研究と経営の両方を強みに2016年に会社化しました。

VCFについて

VCFはサイトカインの放出を通じて心組織の微小環境を改善するだけでなく、や近年注目を集めているリンパ管新生を促すことも確認されています。

組織に壊死が起こると、細胞内外の水分配分のバランスが崩れ、間質に大量の浮腫が発生することに伴う炎症反応が起こります。心不全においては、心組織の壊死による浮腫の発生が心機能回復の妨げになります。メトセラは、この浮腫をいかに取り除き、組織環境を整えるか、を心臓の再生に重要な課題と考えています。
VCFを投与すると、新たなリンパ管網の構築を通じて、浮腫を効率的に排除できる環境が作られます。
加えて、従来は増殖しないと考えられていた内在性の心筋細胞が、VCFの投与によって増殖することも、細胞の投与実験を通じて確認しています。

これら2つの作用機序を確認したことで、VCFが心不全治療における最も望ましい治療選択肢の1つになり得ると確信し、さらに開発を加速させています。

MTC001について

MTC001は、自家のVCFと投与用の特殊なカテーテルの2つを組み合わせた製品です。このユニークな組み合わせによって、最小限の負担で患者さまに細胞を投与することが可能になります。

このカテーテルは、不整脈治療向けのカテーテル開発において確固たる実績を有する日本ライフライン株式会社との共同研究を通じて開発されたもので、適切な部位に正確かつ確実に細胞を投与が可能となっています。これにより、VCFの治療ポテンシャルを最大限に引き出すことや、開胸手術なしでの細胞投与の実現が期待されます。
開胸手術を伴う治療と比較して、カテーテル投与は遙かに低侵襲であり、患者さまの体力的負担や入院費用等の経済的負担の抑制に加えて、医療現場への導入におけるハードルを大きく引き下げることが期待されます。

他家細胞製品とは異なり、自家細胞製品は患者さま本人の細胞を使用するため、免疫反応がほとんどないといわれています。また、他家細胞投与で通常用いられる免疫抑制剤を使用しないため、これに起因する副作用も懸念されません。

複数回投与においても免疫反応を生じにくい自家細胞製品と侵襲性の低いカテーテル、それぞれの強みが組み合わさったことで、MTC001の競合優位性や、治療の実現可能性は飛躍的に向上しています。